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Journal of English Teaching
UNICORN JOURNAL Summer 2002 No.53
落語からRakugoへ(2)

 落語を英訳し、海外へ紹介されている大島先生に、前号に引き続き、苦労話などをお伺いします。

4. 翻訳での苦労
 落語を英語に翻訳する場合、まずシャレをどうするのか、という壁に当たります。もちろん、日本語のシャレや言葉遊び、ゴロ合わせなどは英語に訳しようがありません。でも、ただシャレを抜かしていってしまっては、笑いどころが減ってしまいます。特に海外公演の場合、笑いどころを多くしなければ客が飽きてしまいます。落語をよく理解している日本の観客であれば、噺の最後のオチで笑えれば納得することもありますが、笑いのエンターテイメントに対して舌の肥えている海外の観客相手には、普通の落語よりも笑いを増やさなければなりません。そこで、英語のシャレを作って盛り込む、という工夫をしています。例えば、「時うどん」(東京では「時そば」)という噺の中に「商売は商いというくらいだから、飽きないでやらないとな」というセリフが出てきます。これなどは、"You will get busy that's why it's called business!"のように訳しています。
 また、もともとの落語にはないセリフを足して、笑いどころを増やす場合もあります。日本語にもゴロ合わせやセリフのテンポの良さが面白いところがあります。英語でも、同じようにセリフにテンポを持たせて、軽快な感じを出すように工夫しています。「いらち車」(東京では「反対車」)という噺の中に、狂気ばしった異常にハイな状態のくるま屋が登場します。彼は「世界一速いくるま屋」として尋常ではない速さで走りまくります。こんなキャラクターには、それなりのセリフが必要です。ハチャメチャな速さで走るくるま屋には、"I just run over somebody!"(おっと、今だれか轢いちまったい!)や、 "Fasten your seat belt, hold on to the armrest, close your eyes, shut your mouth, shut your ears!" (シートベルトして、手すりにつかまって、目を閉じて口も閉じてついでに耳もとじて!)"Nobody beats me!"(誰もオレにはかなわない!)などのセリフを作って言わせています。彼のアブナイ感じが出ているでしょう。英語にもいろいろな表現がありますから、それぞれの登場人物に合わせて、それなりの話し方、言葉の選択をするということも大事な工夫です。英語に訳すことによって、より面白い落語にすること、これが大変でもあり、楽しいところでもあります。

東京公演の写真 ←幕前でイントロの大島希巳江。東京渋谷・クロスタワーホールの幕がハデで、負けまくった。お客さんは8割くらいが日本人だったかな。
5. 演じ方における工夫
 一つには、しぐさ、ジェスチャーを大げさにする、という点があります。落語では一人の演者が数人の登場人物を演じ分けるので、それぞれのキャラクターを少々極端に演じる必要があるのですね。落語を見慣れていない海外の観客は、小道具も使わず、衣装も変わらない一人の落語家が複数の登場人物を演じていると、途中でわからなくなってしまうことがあります。観客によりわかりやすく、そしてもちろんより面白くするためにジェスチャーは日本の落語より大きくなる傾向があります。
 もう一つは、落語家さんたちの英語の発音練習です。基本的には、日本人なのだから、日本人らしいジャパニーズ・イングリッシュで十分です。内容がきちんとしていれば、少々日本人くさい発音でも、十分通じます。ただし、普段の日常会話では万が一通じなかった場合にも数回繰り返せばなんとかなるものの、公演ではそうはいきません。一回でしっかり伝わる英語を話さなければ、困ります。そこで、ある程度は発音の練習もしてもらいました。主にアクセントの位置がポイントですね。強く発音するところさえ間違っていなければ、たいていは大丈夫です。発音などにこだわって、恥ずかしがっていると、英語に限らず、外国語なんてなかなか上手くなりません。英語を学習するときに勘違いしやすいことですが、「英語をしゃべる」のではなく、「英語でしゃべる」という意識でなければ、英語は上達しません。つまり、英語で何をしゃべるのかということが一番重要なのです。話したい、伝えたい内容がなければ言語習得は難しいし、そもそも意味がありません。「英語ペラペラになりたい」という人は多いのですが、そんな薄っペラな目的ではダメです。「英語で〜を言えるようになりたい」という人は、アッという間に上手くなります。そう、ちょうど英語落語のメンバーがあっという間に英語が上手くなったように。彼らは、英語で落語を伝えたい、というはっきりとした目的があったから上手くなったのです。伝えようとする気持ちや意欲が相手に伝わる、ということもあるのでしょうね。舞台で必死に演じている落語家の演技は、海外でもしっかり通じています。

6. 海外公演の難しさ
 落語だけではなく、様々な寄席芸も公演の間にはさむようにしています。日本人でも、聞きなれない人は落語を3席も4席も続けて観るのはちょっと苦痛です。落語は想像力を必要とする芸なので、ちょっと集中力がいるのでしょう。そこで、何も考えずに観て楽しめる寄席芸を盛り込んでいます。南京玉すだれ、紙切り、お囃子紹介、二人羽織、大喜利、日本舞踊など、本当に盛りだくさんの公演です。普通、日本の公演でも一度にこれだけの芸を観られるものはありません。やはり、日本を知る機会の少ない海外のお客さんに日本の芸のあれこれを見せたいという、私やメンバーの落語家さんたちの思い入れが強いのです。ですから、海外公演は体力的に非常に厳しいものです。気候も様々な地域で、短期間に多くの公演数をこなします。メンバーも本当によくついてきてくれていると、いつも感謝しています。また、国や文化によって反応も様々です。特に感じるのは、欧米とアジアの違いです。欧米の観客はとにかく笑い出すのが早いのです。笑ったもの勝ち、頭の回転が早い証拠、とでもいうのでしょうか。オチにさしかかると、すぐに笑い出します。それに対してアジアでは、ご丁寧に礼儀正しく、ちゃんとオチのセリフが終わってから笑い出します。そのため、欧米ではオチのセリフを途中までしか言わなかったり、と国によって多少変えることもあります。
 海外公演の難しさ、それはむしろ準備段階で感じます。例えば、舞台設置にしても、舞台の上に正座して芸をする、という感覚が現地のスタッフにはよくわかりません。だから劇場に到着してみたら、とても座るには危なっかしいような高座ができていたり、舞台が低すぎて正座したら観客席からは全然落語家が見えない状態だったり。そのたびに、短い時間で調整をします。それでも、英語落語海外公演はやめられませんね。公演が終わると笑いながら涙を流して、素晴らしかった、また来て欲しい、と言ってくれるお客さんがいるのです。がんばれ、といってくれるスタッフがいるのです。だからこれからも、国内外問わずRakugoが英語になる日までがんばるつもりです。

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UNICORN JOURNAL Spring 2002 No.52
落語からRakugoへ(1)

 落語の英語翻訳や、海外公演プロデュース・司会をつとめ、日本の笑いを世界に発信する「英語落語」の仕掛人、大島希巳江先生に、2回に渡ってその苦労話などを語っていただきます。

1. 英語落語の背景
 1998年の英語落語アメリカ公演ツアーを皮切りに、以来一年に一回のペースでシンガポール、マレーシア、オーストラリアなどで海外公演を行ってきました。話芸であるがゆえに、あまり海外では知られていない日本の伝統芸能、落語を理解してもらうのに大いに貢献し、また好評を得ています。現在では国内外からの公演依頼が非常に多くなり、全ては回りきれないほどです。
 もともと私は異文化コミュニケーションの研究をしていたのですが、その中でもユーモアや笑いというものが、コミュニケーションを潤滑にする、という効果を持っていることに着目していました。特に異文化間でのコミュニケーションでは、様々な文化背景の違いから、コミュニケーションにもギャップが生じやすいものです。そんな時、お互いを理解し、相手を寛容に受け入れるのに、コミュニケーションにおける笑いが大いに役に立ちます。
 自己文化に関するジョークを言うことによって、1)相手の敵対心を取り除く、2)自己アイデンティティの主張、3)お互いの緊張感を緩和する、などの効果を上げることができます。国際コミュニケーションにおいては、このような効果のある小噺やジョークを一つでも英語で話せるようになっておくと、とても便利です。
欧米では、ユーモアが重要視されています。スピーチなどでも、重要なポイントをジョークにからめて話すと、聞き手のアテンションを得ることができるため、よく活用されています。普通に話すよりも、ユーモラスに話した方が、言いたいことをより強烈に相手に伝えることができます。例えば、相手の欠点を指摘するときなど、それをジョークにするとよりインパクトのある皮肉になりますよね。それと同様の効果がポジティブなユーモアでも得ることができるのです。
 欧米文化を吸収しようという姿勢で英語に取り組むケースが多い中、発信型の英語を目指すため、そして日本文化を海外に紹介しようという目的で英語落語を始めました。また、真面目で面白くないという日本人のステレオタイプを打ち破り、「日本にもユーモアのセンスはある!」と主張したかったのです。
 英語で日本文化を紹介するだけなら、なにも落語じゃなくてもいいのではないかと思われるかもしれません。ところが、笑いをともなう落語を使うからこそ大きな効果が得られるのです。落語という笑い話を通して、日本という自己文化を紹介することによって、「日本人ってこんなことをするんですよ、面白いでしょ。笑ってやってくださいよ。」と伝えると、聞き手は日本文化に嫌悪感を抱くより先に、面白い日本文化というものに、笑いながら大きな興味を抱いてくれるのです。日本文化を寛容に受け入れてくれるのですね。そして、これは日本文化を見下して笑う、ということではありません。自分のことをネタにして相手を笑わせる、というのは一般的に自信のあらわれなのです。日本には、素晴らしい文化がたくさんあり、その一部が国外の人にとっておかしいこともあって当然。笑ってくれていいんですよ、他に素晴らしい点がたくさんあるのだから、という自信の裏返しです。
2. 英語教育における英語落語の効果
 英語落語の効果は、海外や外国人に対するものだけにはとどまりません。日本国内における英語教育にも、大きな効果を上げています。まず、なんといっても落語はほとんどが会話で構成されている話です。これを英語にすることによって、英会話となるわけです。現在、英語教育において重要視されるべき英語コミュニケーション、英会話にとっては、英語落語は良い材料です。そもそも、日常会話には難しい単語は出てきません。英語落語を実際に見てもらえばわかるように、簡単な単語だけで一つの話が立派に出来上がっています。簡単な言葉だけでこれだけ面白い話が成り立つのですから、学習者にとっても、自信につながります。そして学生も最後のオチの部分がわかりたい、と思うようになるので、英語を聞いて理解するというモチベーションを引き出すことになります。落語に限らず笑い話や短いジョークでも、学生は普段よりずっと集中して学習します。やはり、オチのところがわかりたいのです。みんなと一緒に笑いたいのです。授業中に英語ジョークを話しますよ、と言うと学生はキリッと集中して、鉛筆を持ちメモの用意をします。そしてわからなかった場合には、「もう一度お願いします!」とリクエストするほどです。日本語にしても英語にしても、笑い話は他の誰かに説明してもらっても面白くありません。自分で聞いて理解して笑う、という過程が学生の知的満足を満たすことになるのです。英語は苦手という、英語コンプレックスを持った学生は多いのですが、英語が全くできない落語家にだって、英語で15分間しゃべって、海外のお客さんを爆笑の渦に巻き込むことができるとうことがわかると、「私にもできるのかも」と思ってくれるようです。

3. 今後の展望
 最終的にはRakugoという言葉が、sushiやkaraokeのように英語になってくれれば、と思っています。英語には日本語からの外来語も増えてきています。言葉は、もちろんその意味も含めて取り入れられていくわけですから、Rakugoという言葉に含まれる日本文化や笑いのセンスなども言葉と一緒に普及するでしょう。日本人の真面目でお堅いイメージも、もう少し親しみやすいものに変わっていくのではないでしょうか。
 そのためにも今後は古典落語だけではなく、現代の日本社会を伝えるべく、新作落語の英語版を作っていく予定です。昔の日本文化を紹介しただけでは、日本を理解してもらったことになりません。もちろん、それは今でも息つぐ日本文化であり、その背景があるからこそ、今の日本を理解できるという利点も古典落語にはあります。古典落語が英語落語の初級であるなら、新作落語は中級です。現在の日本のサラリーマンの現状、勉強漬けの子供たちのぼやき、家庭から開放された働く女性たち、高齢化進む日本の元気な高齢者・・・、題材はいくらでもあります。そして上級英語落語は・・・、皆さんが創る、創作落語ではないでしょうか。
 身近な話を英語にすることで、国内の英語学習者も「なるほど、今の日本はこうやって英語で伝えたらわかってもらえるんだな」と思えることでしょう。そして、海外でも「日本社会って今はこんな風なんだな」と理解されるでしょう。発信型の英語を使って、どんどん日本を海外に紹介していって欲しいと思います。(次号へ続く)

ハイ・シン高校の学生たち ←開演1時間前から体育館に座らされている、ハイ・シン高校の学生たち。硬い床に待ちで1時間、公演2時間、三角座りっぱなしだ。詳細は『世界を笑わそ!』(研究社)のエッセイで!
GLOBAL MANAGER GLOBAL MANAGER GLOBAL MANAGER
GLOBAL MANAGER 2002年5月10日
"Rakugo" in English〜
世界への発信を可能にした
強い思いと日本人の自覚

日本が誇る伝統ユーモア「落語」を英訳し、若手落語家とともに「世界を笑わそう」と海外ツアーを決行、米国、オーストラリアなどで大喝采を浴び、日本文化のグローバル発信で話題を呼んでいる大島希巳江さん。20代後半という若さで、企画から実務までのすべてを一人でこなし、幾多の困難を乗り越えてツアーを成功させるという強い意志は、日本人としてのアイデンティティからきたものだった。「発信する日本人」大島さんに、日本人がグローバル発信をいかに行うべきかを伺った。

「日本人」としてのアイデンティティが発信につながった
 米国、オーストラリア、シンガポール・・・・・・。若手落語家を率いて多数の国で英語落語ツアーを開催し、「笑い」による日本文化の発信で話題を呼ぶ女性がいる。明海大学で講師を務める大島希巳江さん。米国公演を成功させたのは、4年前、まだ20代後半のときだった。
 英語落語のきっかけは米国での高校留学時代にまで遡る。異文化コミュニケーションへの熱い思いを抱え、詰め込んでいった米国に関する知識はほとんど役に立たなかった。 
 「米国の高校生が、英語もたどたどしい留学生に『アメフトのルールを教えて』なんて尋ねるはずがありませんよね。日本では意識もしませんでしたが、米国ではやはり私は『日本人』。同級生も相撲や歌舞伎といった日本のことこそ聞きたいはずですが、そんな知識は全くなかった。コミュニケーションが上手くいかないのを英語のせいにしていましたが、それだけではなかったんです」
 のちの発信の基盤となり、異文化にあって自己を支える、「日本人としてのアイデンティティ」の重要性を痛感した。さらに、米国の大学に進んで国際コミュニケーション論を学ぶうち、多文化が混在する社会のコミュニケーションでユーモアが果たしている重要な役割に気がつく。
 「ユーモアは、『相手を理解して親密になりたい』という気持ちを表現する重要なツール。共通の文化という前提がない会話での緊張感を和らげます。実際に多民族社会ほど個人が冗談を言う割合が高いことが分かり、国際ユーモア学会で発表しました」  しかし発表の席では、「ユーモア不足で有名な日本人がこんな研究を行うのはなぜだ」という本題とは関係ない質問が殺到する。
 高校時代の経験が頭をよぎった。世界で全く知られていない日本人のユーモアをグローバルに紹介したい。日本独自のユーモアを紹介するため調査を重ねた大島さんは、長い歴史をもつ日本の伝統ユーモア「落語」に行き着いた。
 1997年、英語の字幕をつけ、同学会で落語を発表したところ場内は大喝采。これだけで終わらせるのはもったいないと海外英語落語ツアーを思い立った。

「あたり屋」と「はずれ屋」は「BINGO」と「DONGO」に、饅頭とお茶はピザとコーラになった米国公演
 大島さんの奮闘が始まった。噺を訳し、落語家の英語を特訓、公演の手配やスポンサー集めといった実務もすべて一人でこなした。  ―中略―
 大阪に通いながらの落語家の英語特訓には時間も費用もかかった。しかし、最も苦労したのは海外公演のスポンサー集めだった。25歳あまりで肩書も実績もなく、あるのはやる気だけ。企画書を片手に何十件もの企業を回り、熱心に説明しても全く相手にされない。そんな状況でなお大島さんを動かしたのは、「日本独自のユーモアを世界に発信したい」という強い気持ちだった。
 「海外の人に日本のユーモアをぜひ知ってもらいたかったし、落語家さんや公演会場を押さえてくれた知人に、お金がなくて公演は中止なんてとても言えない。これ以上辛いことはもうないはず、と何十回も自分に言い聞かせ、スポンサー探しを続けました」
 ようやく米国公演の準備が整った。行きの飛行機の中ではあまりの大変さに「もうこんなことは二度とやらない」と決意したという大島さん。しかし米国各地の会場で、落語は多様な観客の心をすぐさまとらえた。ツアーの大成功で決意はあっさり覆された。「帰ってくる飛行機の中では、また来年もぜったいやろうと思っていたんです」
コミュニケーション上達の決め手は発信への強い思い
 海外公演を重ねるうち、メンバーの姿勢にも変化が見えはじめた。「軽い気持ちで始めた方も、今は日本の文化を広く伝えたいという意識が出てきているようです。丸暗記だったネタもすっかり自分のものにして、日常会話に応用している。例えばうどん屋が舞台の噺が得意なあさ吉さんは、レストランでの注文も大変お上手。持ちネタのシチュエーションでは皆さんすごく話ができるんです。丸暗記でインプットした英語が血となり肉となり、日常会話に応用してアウトプットできるようになったんですね」
 ほんの数行の噺を覚えるのに苦労していた人が、今では開演5分前に新しいネタを考え、訳を受け取ってすぐに舞台で披露するようになった。「『自分の喋りでお客さんを笑わせたい』というモチベーションがやはり強く影響しているのだと思います。『英語を』勉強するのではなく、『英語で』何がしたいのかということですね。覚えたネタは町中でもどんどん使い、地元の人を笑わせているようです」
 公演の際には司会者としても活躍する大島さんが、「発信」に不可欠な要素としてあげたのは「自信」だった。欧米に対する劣等感から受け身になりがちだった日本が、文化的にも経済的にも世界のトップクラスになった今、『日本を見せてあげる』という気持ちで堂々と発信して欲しいと考えている。コミュニケーションの手段である英語についても、同様に「自信」は重要だ。
 「さまざまな国の人が多様な形で使うというのが国際言語・英語のあり方。日本人も日本人なりに使っていいと思いますし、それでも実際ほとんど通じます。日本人らしい英語の話し方は日本人のアイデンティティ。『インド英語』や『シングリッシュ(シンガポール英語)』のように日本人アクセントを世界に広めるくらいのつもりでいいと思います」自分が日本人だということをいつも忘れないようにしていたい、という大島さん。異文化に接する際に気をつけているのは、偏見をもたないようにすることで、むしろ「自分は何も知らないんだ」というくらいの気持ちで多様な文化に接し、日本のユーモア・落語を広めていきたいという。
 「『Sushi』や『Kara-OK』が英語になったように、いつか『Rakugo』を英語の辞書に載せたいと思っています」

グローバルマネジャーもユーモアは不可欠
「ビジネスにおける笑いの効用」

 欧米のビジネスシーンでユーモアが話題を呼んでいる。ユーモアのセンスが優れているほど営業成績がいいことも明らかになり、ユーモアコンサルタントも盛況だ。「ある日本企業の営業担当者を対象に調査したところ、やはり『ユーモアを重視する姿勢』と『営業成績』には明らかな相関関係がありました。ユーモアはサービス精神の一つ。製品面での差別化が難しい今、ユーモアをはじめとするソフト面のサービスはさらに重要になっていくと思います(大島さん)」

公演道具一式 ←公演道具一式。とにかく海外公演では、座布団や太鼓、毛せん(高座にかける赤い布)など、普通日本ならどこの会場にもありそうなものまで持っていかなければならない。大変な荷物。それに、空港でいちいちチェックを受けるのも面倒!三味線なんか、ネコの皮なんて言っちゃったら、もう税関で時間かかるので、「プラスチックです!」と言い張る。
東京新聞 NEWS LETTER NEWS LETTER
東京新聞 2002年5月8日
東京解剖図鑑 情熱 Passion
RAKUGOで世界を笑わそう

「日本人は堅物、というイメージを変えるには落語が最適だと思うんです」と、英語講師を務めている明海大学キャンパスで語るのは大島希巳江さん(31)だ。大島さんの専門は異文化コミュニケーション。国際基督教大学大学院に在学中、英語教育の「笑いとユーモアの効果」を研究するために選んだのが“英語落語”だった。
 応募してきた若手落語家たちに、翻訳した落語を猛特訓させ、1年後の1998年から海外公演を開始。これまでにアメリカ、マレーシア、オーストラリアなどを回り、どの地も満員盛況とし、『世界を笑わそ!』という本も出した。古典落語を中心に30作品を演目にしているが、一番受けるのは『時そば』だとか。「ケチ話は万国共通で受けるみたい」というが、実は翻訳はかなり苦労している。シャレの個所は直訳するわけにはいかず、英語のシャレを創作しているからだ。意外や、研究前には落語の知識はほとんどなし。だが今や落語通。
「なぜ日本人にとって、これが面白いのか。ジョークの文化的背景を落語で知ってほしい」という大島さんの目標は、『RAKUGO』が世界共通語として辞書に載ることだ。なお、8日からはホームページ=http://www.english-rakugo.com/=も開設する。

笑福亭鶴笑の「忍者」 ←笑福亭鶴笑の「忍者」では、こんな大掛かりなモノまで持っていって使ってみたこともある。でも、海外に持ち込むのが大変なので、最近はあまり使わない。
PIEE NEWS LETTER NO.59 May 2002
Rakugo in English
日本の笑いで国際交流

山崎:落語の海外公演を始めてもう6年になるそうですね。
大島:ええ、最初は97年で今年は6年目の海外公演です。
山崎:始められたきっかけは何だったのですか。
大島:その前年、96年に国際ユーモア学会に初めて参加して論文を発表したのです。
―中略―
山崎:初めて落語を聞いたアメリカ人の反応はどうでした。
大島:アメリカは日常生活の中にジョークが入り込んでいますから、反応はよかったですね。でも、日本人とは違う反応もあります。聞いているうちに落語も捨てたものじゃないと思うと、競って笑いはじめるのですね。アメリカ人はジョークが分からないやつは頭が悪いというような感じがあります。ですから、面白かったら最初に笑ったほうが頭の回転が速いやつだっていう事になるのです。
―中略―
山崎:翌年はシンガポール公演。
大島:ええ、シンガポール公演のスケジュールは現地の日本人会の方にお任せしたら大変なハードスケジュールが組まれていて5日で8公演の予定になっていました。各会場で立ち見が出るほどの盛況で温かく迎えていただきました。シンガポール公演では初めて英語の大喜利にチャレンジしました。全員でネタ作りに頭をひねって、私は英語にしてみんなに覚えてもらう。大受けでしたけれどね。2000年はスタークルーズの船上公演でシンガポール、マレーシアを回り、昨年(2001年)はオーストラリアのシドニー、キャンベラ、メルボルン、ダーウィンで公演しました。今年(2002年)は、国際交流基金の招待事業に指定されてバンコク、クアラルンプール、ブリスベン、パースなどで公演する予定です。
山崎:英語落語の公演はまだまだ続きますね。

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Copyright 2002 Kimie Oshima